音と木、そして音楽を結びつける楽器
山々に囲まれた西粟倉村。岡山の北東部に位置し、面積の95%を山林が占める緑豊かな村です。旧影石小学校の理科室に石川さんの工房はあります。石川さんが運営する「morino oto」では西粟倉産のヒノキを使い、木の楽器と音の出るおもちゃを製作しています。楽器やおもちゃはどれもシンプルなデザインで、お子様でも簡単に楽しめます。その音色はとても心地よくあたたかで、木の良い香りと温もりを届けてくれます。
西粟倉村は、村全体で森を大切にしようという「百年の森林構想」という活動を推進しています。ソーシャルビジネスを学ぶため見学に来た石川さんは、その活動やそれを支えているIターンの方の生き生きとした姿を見て、「自分自身も何か社会の問題を解決するような活動が出来たら」と、2014年に地域おこし協力隊として移住しました。音と木、そして音楽を結びつけ、社会にも貢献できるのではと考えたのが『楽器を作る』という活動だったそうです。ギターなどの弦楽器に始まった楽器作りは、その楽しさを拡げようと「小さな子どもでも作れるようにもっと簡単にしよう」とその種類を増やしていきました。そこで生み出されたのは、カズーやシェーカー、ウッドベル、kan pon ponなどです。これらは、たたく、こする、共鳴させるといった楽器の原形をシンプルにデザインしたものです。幼児でも楽しくリズム遊びができるkan pon ponの表面には、「山」と「水」が表現されたスリットが入っており、バチや手でたたくことで多彩な音が生まれます。
石川さんは普段、障害者就労継続支援施設で働きながら、楽器の設計から製造、販売まで一人で行なっており、週末には各地のイベントでワークショップを開催するなど、そのパワフルな姿は、とても生き生きとしています。「弦楽器や打楽器の種類を増やしたい。作業の一部を障害者就労継続支援施設に発注することで、工賃を支払えるような仕組みを考えている。思想を継いで、次の新しい人が活動を継続してくれたらいいな」と今後の活動にも目を輝かせます。
西粟倉村の魅力については、100年の森林の人工林や若杉原生林が身近に残っていたり、吉野川の渓流にはイワナやアマゴが自生していたりと、自然豊かで四季折々楽しめるところだと教えてくれました。中でも人工林の中をヒメボタルが乱舞する光景はとても幻想的だそうです。
「mori no oto」のあたたかい木の音色を体感できるワークショップは、お子様から大人まで楽しめます。ワークショップ最後の参加者全員での演奏は、盛り上がること間違いなしです。
石川 照男
Teruo Ishikawa
1953年京都府生まれ。昔から音楽や美術が好きで、大学でインダストリアルデザインを学ぶ。大手家電メーカーでのデザインの仕事を経て、2013年大阪枚方家具団地「家具町工房」で「音楽の楽器製作教室」を開設。2014年、活動拠点を岡山県西粟倉村に移し、“あたたかな音色に包まれ、自然と人が支え合うすてきな暮らしを創りたい”との思いで「mori no oto」を開設。様々なイベントでワークショップを行なう。
mori no oto
もり の おと